・「骨太の方針2008」とは,「経済財政改革の基本方針2008〜開かれた国,全員参加の成長,環境との共生〜」の通称である。

・2000 年までは大蔵省が予算編成の主導権をもっていたが,権限を内閣に移す目的で,2001 年1 月に小泉内閣総理大臣を議長とする「経済財政諮問会議」が設置された。
・2001 年から毎年6 月に答申される
「経済財政諮問会議」の経済政策・財政政策方針は「骨太の方針」と通称され,長期的に取り組む経済財政改革の基本的な方針として,次年度予算で重点化すべき歳出項目やその規模,それに関連した経済政策・財政政策目標などを掲げたものであり,政府予算のあり方(進め方)に極めて重要な意味をもつ。

・小泉内閣では郵政民営化や三位一体改革などを打ち出し,構造改革を推進する原動力となった。小泉内閣以降の安倍内閣,福田内閣でも同様に策定され,2008年度で8回目の「骨太の方針」となった。

・「骨太の方針」の答申を受け,閣議決定した後の政府の予算案作成までの通例の流れは,財務省が7 月末〜8 月初旬にかけて「概算要求基準」(各省庁の予算要求する際の基準で「シーリング」といわれる)を示し,各省庁が8 月末ごろに「概算要求」を財務省に提出する。その後,財務省(主計局)が各省庁と折衝のうえ予算としての査定をし,12月末に財務省の原案をまとめて,閣議決定を経て政府案が作成される。


・そして,例年,予算案(歳出)の通常国会への提出は税制改正案(歳入の一部分)とセットで行われる。2008年の流れを例にすれば,@2008年度税制改正大綱の閣議決定(1/11),A「2008年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」の閣議決定(1/18),B169回通常国会召集(1/18),B2008年度予算政府案国会提出(1/18),C税制の改正法,予算案が国会で可決・成立(3月),C法改正(3月),D2008年度開始(4/1)であった。
http://www.yamadajuku.com/
「骨太の方針2008」とは何か?
年度(通称) ポイント(2001年度〜2008年度)
骨太の方針2008
(2008年6月27日閣議決定)

■正式名称:
「経済財政改革の基本方針2008〜開かれた国,全員参加の成長,環境との共生〜」

■やまだ塾のコメント:
簡単に言えば,日本は,歳入(約53兆円)に対して,歳出(約83兆円)であり,約30兆円の赤字(借金)の財政状況にある。この約30兆円の赤字を埋めるためには歳入増加(保険料アップ&消費税を含めた増税)することと歳出の減少(経費削減&国民への施策のカット)こと以外にない。その方策のための確固とした方針(計画)を持たなければ,現世代では対応できなくなり,結局次世代の若者へ累積した赤字を負の遺産として先送りすることになる。その方針(計画)がすなわち「骨太の方針2008」であるはずが,消費税を含めた具体的な税制改革にも触れず,具体的な削減目標も示さなかった。「骨太の方針2006」は基礎的財政収支の黒字化を歳出・歳入一体改革で2011年度に達成することを目標とし,歳出では11.4兆〜14.3兆円の削減を掲げて分野ごとに削減目標を定めた。「骨太の方針2008」は,一応,「骨太の方針2006」の黒字化目標を堅持し,最大限の歳出削減を行う姿勢を示しているが,その中身は「皆の意見を入れただけで総花的」(自民党内からの意見)との見解があり,歳出,歳入とも裏づけを欠いているとの評価が一般的である。例えば,注目された社会保障分野の「骨太の方針2006」で決めた毎年2200億円の削減目標を堅持するとしながら,後期高齢者医療制度や医師不足,少子化対策を別枠としている。目先の帳尻合わせをするために,結論を先送りしながら,見えない他の部分で国民に負担を強いる手法である。
(2008年7月14日)

●「骨太の方針2008」の要点
・方針のうち「成長力の強化」では,働く意欲のあるすべての人々が能力を発揮する「全員参加の社会」を実現するため,2010年までに220万人の雇用充実を明示した「新雇用戦略」や,2020年を目途に留学生数を30万人とする「教育の国際化」などを盛り込んでいる。

●「骨太の方針2008」の最大の特徴

・歳出改革については「最大限の削減を行う」とし,小泉,安倍政権から続く歳出削減路線を堅持する姿勢を示し,「骨太2006」「骨太2007」に則って歳出改革を進める方針を確認した。しかし,消費税を含む税制の抜本改革は「早期に実現を図る」と記述している。
「骨太の方針2008における「福祉関連分野の抜粋」(やまだ塾)

●経済財政改革の課題
・以下の解決に向け,経済成長戦略の推進,社会保障制度の効率化などに取り組む。
@「経済成長の強化」
A「地球環境と経済の両立」
B「すき間のない社会保障制度の構築」
C「消費者主役の行財政への転換」

●経済成長戦略の推進
・若者・女性・高齢者の就労を支援し,10年度までに200万人の雇用充実を目指す。
・若者は「フリーター等正規雇用化プラン」により100万人の正規雇用化を実現する。女性は「新待機児童ゼロ作戦」の展開により最大20万人の就業増を図る,高齢者(6064歳)は継続雇用の推進などにより100万人の就業増を図る。
・医療・健康支援・保育・介護・生活支援・コミュニティビジネスなどの生活直結型産業の成長を促すため,団塊の世代や女性の参画を促すとともに,規制改革を進める。

●社会保障制度
・「社会保障国民会議の議論も踏まえ,制度の持続可能性を高めるとともに機能を強化する」と明記された。
・供給体制のムダや非効率がないか全般的な見直しを行う一方,これまでの制度改革で十分対応できなかった問題や改革の過程で生じた問題を「重要課題」として位置づけ,従来の歳出改革とは別枠で対応する。

●現行施策の見直し
・現行施策の見直しは,昨年策定した「医療・介護サービスの質の向上・効率化プログラム」に従い,供給コストを最大限低減する。

●重要課題
・2009年度に対応が必要なものは,一般・特別会計の歳出経費を捻出する。
@後期高齢者医療制度における低所得者対策
A介護・福祉サービスを支える人材確保対策
B総合的な少子化対策
C障害者の生活・就業支援,雇用促進
D障害者自立支援法の抜本的見直し
E家族や地域社会での支え合いの強化 など

●歳出・歳入の一体改革
・「引き続き『骨太の方針0607』に則り最大限の削減を行う」とした。
・社会保障費も「5年間で伸びを11000億円削減するとの方針を堅持したが,毎年2200億円を削減することに対しては,「機械的に5年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではない」とした。

骨太の方針2007

■正式名称:
「経済財政改革の基本方針2007〜「美しい国」へのシナリオ〜」
→■「骨太の方針2007」
→■「経済財政改革の基本方針2007〜美しい国へのシナリオ〜」(パンフレット)
→■やまだ塾のまとめ

■やまだ塾のコメント:
成長戦略,行財政改革から環境,教育まで,各省庁の要求項目を取りまとめたような内容である。肝心の消費税の論議を秋以降(参議院選挙後)に先送りし,公共事業費の削減幅(B%カット)を明記せず,正式名の表題から「構造改革」の文言が削除されているように,これまで進められてきた好悪図改革の路線がまったく色あせてしまっている。さらrに,来年度の予算では,2006年に決めた5年間の歳出削減計画においても,「機械的に5年間均等に削減することを想定しない」と新たな解釈を持ち込んでいる。「骨太」ではなく「骨抜き」「骨なし」「小骨」「骨粗しょう症」と酷評され,一般的には低評価である。(2007年7月1日)

●「骨太の方針2007」の要点
・労働生産性(一人あたり時間あたりの生産性)の伸び率を5年間で5割増にすることを目標に掲げ,この実現に向けた労働市場改革(ワーク・ライフ・バランス憲章の策定など)や「成長力底上げ戦略」(ジョブ・カード制度の構築、最低賃金制度の充実など)などを盛り込んでいる。

●「骨太の方針2007」の方向性

@成長力強化
A21世紀型行財政システムの構築
B持続可能で安心できる社会の実現
C2008年度予算における基本的考え方

●「骨太の方針2007」の重要課題
@成長力強化
A財政健全化

●「骨太の方針2007」の骨子
@成長力強化
・一人当たりの「労働生産性」(就労者1人が一定時間に働いて生み出す国内総生産(GDP)を示す)を5年間で1.5倍に引き上げるために,成長力加速プログラムや労働市場改革を進める。
・成長力加速プログラムでは,フリーターなどの就職困難者に就職能力の形成機会を与える「人材能力戦略」や,生活保護世帯・障害者などの就労による自立を促す「『福祉から雇用へ』推進5か年計画」,授産施設で働く障害者の工賃水準を引き上げる「工賃倍増5か年計画」に取り組む。
・労働市場改革では,「ワークライフバランス」実現に向けて,憲章や行動指針を策定する。
A21世紀型行財政システム
・歳出・歳入一体改革や地方分権改革を進める。
・歳出・歳入一体改革では,「骨太の方針2006」の方針に則った歳出削減を実行し,社会保障費は「5年間で11000億円を削減する」方針に従い,供給コストの低減を図る。
B持続可能で安心できる社会の実現
・少子化対策充実や質の高い社会保障サービスを構築する。
・年金漏れ問題では,「加入者・受給者全員が本来受け取ることができる年金を受け取ることができる」と明記した。
・健康保険証をIC化する「健康ITカード」の導入を進める中で,社会保障番号を検討する。
C2008年度予算における基本的考え方
・「骨太の方針2006」に則り,最大限の歳出改革を継続する。
・従来の具体的目標値は示さず,「11年度までの歳出改革の内容は,機械的に5年か均等に歳出削減を行うことを想定していない」として,単年度の削減幅に幅を持たせている。
・社会保障費は,これまでは「単年度で2200億円の削減」が目安とされていたが,5年間で目標を達成すればよいこととなったために,2008年度の予算編成は,11年度までの4年間を見据えた計画的な取組が求められることとなる。

●その他
・経済連携協定(EPA)で,アメリカ,EUとの後遺症を将来課題として検討
・地域間の税収格差の是正を目指す。「ふるさと」への応援が可能となる税制上の方策検討
・道州制実現のための検討を加速
・国公立大の運営費交付金は成果を踏まえ配分
・耕作放棄地を5年程度でゼロに
・メリハリのある教育予算の財源を確保
・各府省の公務員再就職あっせん禁止
・各閣僚は8月をめどに,独立行政法人の整理・合理化策提出
・サマータイムの早期実現の検討 など

骨太の方針2006

■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006
→■やまだ塾のまとめ / 経済財政諮問会議まとめ / 本文 / 「骨太の方針2006」における「社会保障」について / 簡易版(2007年部局長会議資料

●「骨太の方針2006」の要点
・今後10年間を「新たな挑戦の10年」と位置づけ,「成長力・競争力強化」「財政健全化(歳出・歳入一体改革、簡素で効率的な政府の実現)」,「安全・安心の確保と柔軟で多様な社会の実現(再チャレンジ支援や少子化対策など)」に取り組む方針を示した。


●「骨太の方針2006」の最大の特徴
2011年度における国・地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化 を目標に掲げ,社会保障費など主な費目ごとの歳出削減目標を設定し,今後5年間で11.4兆〜14.3兆円の歳出を削減するとした。

●現状の位置づけ(認識)
・新たな挑戦の出発点

3 本柱
@財政再建(歳出・歳入一体改革)
A経済成長
B安全・安心な社会の構築

●財政再建の目標
2011 年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス,借金と元利払いを除く収支)を黒字化するためには16.5 兆円の財源が必要だとし,11.4 兆円〜14.3 兆円の歳出を削減(うち「社会保障」は,1.6兆円,「人件費」2.6 兆円,「公共投資」3.9 兆円)し,歳出削減で穴埋めできない2.2 兆円〜5.1 兆円は税制改正で対応することとさた。また,社会保障費の安定財源確保のために,消費税の目的税化を検討する方向性を示している。2007 年度予算から反映される。

●指摘されている主な問題点
@ 「社会保障」:実現性にかける(実現のめどが立っているのは,失業給付の国庫負担と生活保護の見直しのみであるが,目標額との差が大きい)
A「少子化対策」:総花的(幼児教育の将来の無償化の検討を明記している)で,財源確保策が十分でない
B消費税の具体策を先送りした(2007 年の参議院選挙以降と見られている)

<参考>
骨太の方針2005

■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005

・2年間の課題として「小さくて効率的な政府をつくること」,「少子高齢化とグローバル化を乗り切る基盤をつくること」,「デフレを克服し,民需主導の経済成長をより確実なものとすること」をあげている。
(小さくて効率的な政府の実現,政府のODA の戦略的拡充
,公務員の総人件費削減・定員の純減目標,市場化テストの本格的導入など)

骨太の方針2004

■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004

・2005〜2006年度をデフレからの脱却,新たな成長に向けた基盤整備のための「重点強化期間」と設定し,期間中に行う主な改革として若年者対策を柱とする「人間力の抜本強化」などをあげ,「若年自立・挑戦プラン」の強化などを重点施策として盛り込んだ。
(地方へ3 兆円税源を移譲
2005 年に郵政民営化法案の提出,社会保障制度の一体的改革盛り込む<社会保障関係では,障害者の雇用・就業・自立支援のための基盤整備を進めることが初めて方針に盛り込まれた>など)

骨太の方針2003

■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003

・国と地方の改革(「三位一体の改革)の大枠が決められ,国庫補助負担金,地方交付税,地方への税源移譲を,三位一体で改革するという枠組みが,「総理指示」という総理の強力なリーダーシップにより決定
(「三位一体改革」で地方補助金を4 兆円削減,一定割合の税源移譲
,規制改革の推進(一般小売店での一部医薬品販売など)

骨太の方針2002 ■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002

・構造改革実現のための具体的な肉付けの30のアクションプログラムなどを明示
2010 年代初頭に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化をめざす
2006 年には2011 年とされた)
骨太の方針2001 ■正式名称:「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2001

・構造改革への基本的な方向が明示
(国債発行を30 兆円以下
郵政民営化,不良債権処理の抜本的解決など)

(2008年7月14日)

「骨太の方針2008」(概要 / ポイント / 本文

「骨太の方針2008」関連資料リンク集

「骨太の方針2008における「福祉関連分野の抜粋」(やまだ塾)