20094月から福祉関連分野で何が変わったか?

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(2009年4月1日)
4月6日追記
5月14日追記
10月24日追記

主な項目 ポイント
1 改正雇用保険法の施行

(2009年5月14日追記)
「雇用保険制度見直しの5項目」(まとめ)
非正規労働者への支援強化を目的とする改正雇用保険法が3月27日の参院本会議で可決,成立した。2008年度内に失職する人にも適用されるよう,3月31日に施行された
・主な改正点
@保険の加入条件の緩和
  ・非正規の加入要件:「週20時間,1年以上」→「週20時間,6か月以上」
A再就職困難者への失業給付日数の延長(60日分)
B雇用保険料率の引下げ
  ・1.2%→0.8%(労使折半)
C失業給付を受けるために必要な加入期間の緩和
   ・12か月→6か月

2 ■無保険の中学生以下への対応 ・国民健康保険の保険料滞納で無保険の中学生以下の子どもに対して,市区町村が短期保険証を交付する。
3 ■教員免許更新制度の導入 ・有効期間が10年間となる。
4 ■有害サイト対策法の施行 ・18歳未満の子どもが使う携帯サイトなどに,有害サイト閲覧制限サービスを組み込むことが義務づけされた。
5 ■低公害車の購入優遇制度 ・自動車取得税や自動車重量税が免税・減税される。
6 「労災保険率」の改定
<2009年3/5「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
労災保険率は,業種別に災害リスクが異なる観点および労働災害防止インセンティブを促進し,かつモラルハザードを防止する観点から,業種別に設定され,原則として3年ごとに改定することとされている。一定規模の事業においては,過去3年間の収支率に応じて,メリット制(一定の範囲内で保険料率を増減)が採用されている。

→労災事故は未だに非常に多い(2007年の労災死亡者数は1357人)。労災事故は,精神疾患や過労死などますます複雑さを増しているといっても,「後追い行政」が認められるものではない。また,「労災かくし」(メリット制が要因になっているという指摘がある)という重大な問題に対する有効な解決策が見出されていない。(筆者)

「2007年における死亡災害・重大災害発生状況等」
「労災かくしは犯罪です。」(厚生労働省)
7 「要介護認定の調査方法」の変更(2009年3月)
        ↓
「認定調査員テキスト2009改訂版」の修正概要 / 認定調査員テキスト2009改訂版(2009年8月)
介護認定審査会テキスト2009改訂版(2009年8月)
<2009年8/11「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
→結局,「介護認定の見直しに係る検証・検討会」は,「一次判定ソフト2009」およ「び介護認定審査会テキスト2009」の「検証・検討」を行わず,「認定調査員のテキストの修正」だけで「検証・検討」を終息させた。『厚生労働省に猛省を促したい』という,国民向けのジェスチャーを弄して,最小限の手直しで幕引きをしたと受け止めている。見事であるが,国民が「有識者」に期待しているのは,そんな小手先の対応ではない。
→日本の失敗を参考にして創設された韓国の「介護保険制度」は,2008年7月に施行された。韓国では,日本の介護保険制度の内容や現状を熟知している行政担当者や有識者は多いと言われる。しかし,日本では韓国の動向が話題に上ることは少ない。「介護の社会化」や「高齢者の自立支援」という日本に定着していない言葉をキーワードにスタートして行き詰っている日本,自国の歴史を重んじて儒教精神から「親孝行」をキーワードにスタートさせた韓国。今後,日本では,医療保険と介護保険の一体化,被保険者と給付対象者の見直し,要介護認定システムの構築,家族介護に対する現金給付の導入,介護支援専門員制度の存廃などを検討していかなければならない。筆者は,検討に際しては,韓国の「介護保険制度」からも学ぶという姿勢が大切だと思う。(筆者)

8/5(■「第3回要介護認定の見直しに係る検証・検討会」で軽度化が修正されることになった,7/16(■「新基準の介護認定」において「非該当(介護不要)」の認定が倍増した(ニ次判定結果の要介護度区分の比較(新規申請者):P.16)),5/21(■認定調査員テキスト2009(平成21年3月改訂版)および認定審査会委員テキスト2009(平成21年3月改訂版),4/21(■「第1回要介護認定の見直しに係る検証・検討会」,3/26「4月から要介護認定の調査方法が変わる」,3/25(■「認定調査員テキスト2009」の記事を参照の記事を参照

<2009年3/26「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
(4月からの見直しの考え方)
●申請手続はこれまでどおりですが,認定調査員がご本人を訪問して行う調査は,調査時のご本人の状態をありのままに調査する方法に変わります。このため,調査の際に,ご本人やご家族の方が,ご本人の普段の様子を調査員に詳しくお伝えいただくことが重要になります。
●認定審査は,ご本人の生活の上で、どれほど介護の手間がかかるかを判定するものです。要介護度は病気などの重症度ではなく,必要とされる介護の量で決まります。これまで通り,「要支援1〜2,要介護1〜5」の7段階であり,要介護度の仕組みそのものが変わるわけではありません。
●今回の見直しにより,最新のデータに基づいて,より正確に介護の手間が判定できるようになります。併せて,認定結果のバラツキを減らし,要介護認定を公平なものとします。
<変更のポイント>
@認定調査・主治医意見書
実際のご本人の状態や介助の程度のありのままを見させていただき,普段の様子などもお聞きします。ご本人やご家族が普段困っていることや不便に思っていることは,具体的に遠慮無く調査員や主治医の先生にお伝えください。
A1次判定
最近の介護サービスの開発・進歩にあわせ,より適切な介護の手間のかかり方を判定するために,使用するデータを更新しました。
B2次判定
「認定調査」などでお伺いした,より具体的な内容をもとに,審査会で総合的に判断されます。

<2009年3/25「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
「認定調査員テキスト2009」
・2009年4月からの「要介護認定の調査方法の変更」(後日掲載)に対応したテキストである。
→「認定調査員」の資格要件,業務内容,研修体制,雇用状況,評価を明確に答えられる人は少ないと思う。筆者は,「介護保険制度」の良否は「認定調査員」の資質に左右されると考えており,現状のままにしておくべきではないと思っている。要介護認定に際しては,形態の欠陥だけでなく,認定調査員の採用・養成方法の欠陥(場当たり的な自治体の非常勤職員採用によるベテランの不在など)を俎上に載せなければ,介護保険制度がよい方向に向かっていかないように思う。
→「要介護認定調査」を「介護福祉士」の国家資格に包含し,教育カリキュラムに組み込むことは解決法とならないだろうか。「介護福祉士」の専門性を高め,要介護認定の質を担保し,ひいては,「介護福祉士の社会的地位の向上」につながると考える。やれることはまだまだある。行き詰っていても仕方がない。
→介護保険のことはすべて介護支援専門員(ケアマネジャー)という一極集中的な考え方でことを解決すべきではないと考える。(筆者)
8 「2009年度の介護報酬改正」 <2009年3/9「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
<介護報酬改正の主要な項目>
サービス 項目 改定の概要
@訪問介護 身体介護 ・2310→2540円/回
生活援助 ・2080→2290円/回
A通所リハビリ 1H−2H ・なし→2700〜3900円/回
B通所介護 CCW40% ・なし→120円/回
C小規模多機能居宅介護 CCW40% ・なし→5000円/月
認知症 ・なし→5000or8000円
D特養 夜勤職員 ・なし→130〜410円/日
E老健 夜勤職員 ・なし→240円/日
認知症 ・600→2400円/日

→左記の通り今回のプラス改定(+3.0%)でも過去2回のマイナス改定分(−4.7%)を取り戻してはいない。厚生労働省は今回の改定のねらいの一つとして,介護職員の報酬アップで待遇を改善し,人手不足を解消することをあげている。介護離れにつながった2006年度の介護報酬の引き下げの施策失敗をたな上げにし,かつ十分な議論もせず何の根拠もなく行政が勝手に決定した3.0%アップであるのに,「また,ズレたことを言ってる」というのが現場の感想である。
→今回の改定では,基本報酬自体の「底上げ」がないため,すべての事業所の収入が3.0%増加するわけではない。上記の通り一定の基準を満たす事業所への上積みをする「加算方式」である。規模の小さいところには不利な改定である。なお,介護報酬改定に伴い2009年4月から65歳以上の保険料も上昇するが,2009年度は全額,2010年度は半額の増加分を国が補填するとされている。
→日本の介護保険制度はいま,介護現場に事業経営と人材確保の困難をもたらし,制度そのものが崩壊の危機に直面している。「走りながら考える」ということで始めた介護保険制度の答えが「いまの状況」である。日本の介護保険制度における致命的な欠陥は,「利用者の視点でないこと」と「行政のさじ加減で進められていること」だと筆者は考えている。介護保険制度の当初の目的であった「介護の社会化」の再構築に関しては,@利用者への負担の軽減,A支給限度額の引き上げ,B介護保険料に対する公的補助の実施,C介護型療養病床の継続,がベースになると考える。3月8日のテレビ番組(テレビ朝日ザ・スクープSP)のなかで,「介護型療養病床の廃止」の施策に直接関与した当時の厚労省担当者が,「ほとんど議論もなされず1か月で決定された」「間違った施策であった」ことを実名で露出して告白していたのを観て衝撃を受けた。今後,「自立自助」「民間活力導入」のもとで行われた小泉内閣の「社会保障構造改革」を適正に評価しなければ先へ進めない。(筆者)

9 「義肢等補装具の支給方法等の大幅な変更」
<主な変更点>
@現物支給→費用支給
A受領委任すれば,原則購入(修理)の費用負担なし
B差額自己負担が認められる
(一定の要件下で)
・業務災害・通勤災害により傷病を被った場合に,両上下肢の亡失または機能障害等の残った人は,義肢その他の補装具等が必要不可欠となる。労災保険では,社会復帰促進等事業として「義肢等補装具の支給」を行っている。
10 「改正雇用促進法」の施行 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(2008年法律第96号)が成立し,2009年4月から段階的に施行される。

☆障害者雇用納付金制度の対象事業主が拡大される。
・常用雇用労働者201人以上の事業主 2010年7月〜
・常用雇用労働者101人以上の事業主 2015年4月〜

☆短時間労働(週所定労働時間20時間以上30時間未満)が障害者雇用率制度の対象となる。(2010年7月〜)
常用雇用労働者の総数や実雇用障害者数の計算の際に,短時間労働者を0.5カウントとしてカウントすることとなる。

☆このほか,障害者雇用率の算定の特例を創設します。(2009年4月〜)
<参考>2009年5月に変更になる事柄>
介護サービス事業者の業務管理体制の整備について ・2008年の介護保険法改正により,2009年5月1日から,介護サービス事業者には,法令遵守等の業務管理体制の整備が義務付けらた。
<参考> 2009年2月に変更になった事柄>
■高等職業訓練促進給付金 ・母子家庭の母親に対する高等職業訓練促進給付金の給付期間が延長された。
<参考> 2009年1月に変更になった事柄
■「産科医療保障制度」の導入と出産一時金の引き上げ <2008年12/4「福祉行政の最新情報」記事の再掲>
2009年1月から「産科医療補償制度」が始まり,出産一時金が38万円に増額される

・「産科医療補償制度」は,出産時の事故で「脳性まひ」の赤ちゃんが生まれた場合,医師に過失がなくても妊産婦に3000万円の補償金を給付する無過失保障制度である。産科医の不足の原因の一つに,医療事故による訴訟問題であることから,そのリスクを軽減させることも目的で,2009年1月からスタートする。
・産科医院や助産所が民間保険に加入し,1回の出産につき3万円の掛け金を支払うこととなる。その分が分娩費用に反映されるため,出産した母親に健康保険から支払われる「出産育児一時金」(35万円)が,2009年1月から38万円に増額されることとなった。
・運営主体は(財)日本医療機能評価機構である。

→「補償対象がなぜ脳性まひだけなんだ」という疑問がすでに出されていたが,結局見切発車になった。当面は原因の特定が難しいとされる脳性まひを対象とし,制度を機能させることに全力を挙げ,産科から小児科へと,一つ一つ対象を広げる視点を持ってやっていくという見解もあるが,対象拡大には財源が必要であり,見通しは示されていない。スウェーデン(1997年法制化)やフランス(2002年法制化)では,補償対象は「医療事故全般」であり,高額ではないが幅広く保障がされているといわれている。また,今回の制度には,過失のある医師への処分の仕組みがない。さらに,金銭の問題だけが焦点化されており,原因究明や再発防止の具体的な対策が講じられていない(「発症原因が分析され,再発防止に役立てられる」という文言にとどまっている)。医療の安全・安心につながるこれらの対策についても,スウェーデンやフランスの制度には存在するといわれている。やはり急場しのぎの制度のように思える。(筆者)