提案 主な法律名 ポイント
1 法務省 少年法の一部を改正する法律

→○新旧対照条文


「少年法の一部を改正する法律」(2008年)の概要 (やまだ塾まとめ)

(2008年9月23日追記)
改正少年法のポイントQ&A(法務省)

・法案提出の理由:少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため,一定の重大事件の被害者等が少年審判を傍聴することができる制度の創設,被害者等による記録の閲覧および謄写の要件の緩和等を行うほか,成人の刑事事件により適切に対処するため,その管轄を家庭裁判所から地方裁判所等へ移管する等の必要による。
・法案提出までの経緯:
@2000年の法改正により,少年事件被害者への配慮の充実を図る観点から,少年審判の記録の閲覧,謄写,それから被害者等の申し出による意見の聴取,さらに審判結果の通知の各制度が新設されている。
Aまた,司法の過程において,かつては適切な心配りが欠落していた犯罪被害者やその遺族への配慮とその権利利益の保障という一層広い観点から,2004年に犯罪被害者等基本法が成立し,その基本理念として,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」ということが明記された。
Bこれを受けて,2005年には政府で犯罪被害者等基本計画が策定された。この基本計画の中には,「少年保護事件に関する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた制度の検討及び施策の実施」についての記載がなされている。
Cこうした被害者等の権利利益の保護の充実を図るという大きな流れの中で,今回,特に少年事件の被害者等に非公開である少年審判の傍聴を認めることとする規定などを盛り込んだ法律案が国会に提出された。
・改正法のポイント
@少年審判の傍聴
A記録の閲覧・謄写の範囲の拡大
B意見聴取の対象者の拡大
C成人の刑事事件の管轄の移管等
「殺人など他人を死傷させた重大事件」を対象に,家庭裁判所が加害少年の年齢や心身の状態などを考慮し傍聴を許可する内容である。被害者らが不安や緊張を感じる恐れがある場合は,弁護士や支援者の付き添いも認める。
・野党が「加害少年への配慮」を求めて改正法案の審議入りが遅れたが,国会終盤に与党と法案修正(@家裁が傍聴の可否を判断する前に加害少年の弁護士(付添人)への意見聴取も義務づける,A加害者が12歳未満の審判は傍聴対象から除外するなど)で合意した。
・損害賠償請求をする際などに限られている事件記録の閲覧やコピーを原則的に許可する。被害者が死亡した場合に配偶者らに認めている審判での意見陳述を寝たきりになった場合などにも認める。

【少年審判とは】 
・少年審判は,刑罰を科すことを主目的とする刑事裁判と異なり,20歳未満の少年の保護や立ち直りの支援に重点が置かれ,家庭裁判所が非行事実の有無を判断して処遇を決める手続きである。
【海外では】
・海外の少年事件の審理は,アメリカニューヨーク州,イギリス,ドイツ,フランスなどで裁判所の裁量などにより,被害者らに傍聴を認めている。


【施行日】公布から6か月以内
【成立】2008年6月11日
2 厚生労働省 介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律(案)


→○介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律について(4.0MB)
→○介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
・法案提出の理由:介護サービス事業者の業務運営の適正化および利用者に対する必要な介護サービスの提供の確保を図るため,介護サービス事業者に対し,介護保険法を遵守するための業務管理体制の整備及び事業廃止時等における利用者の保護を義務づける等の必要による。
・現行の介護保険法では,「連座制」(一つの事業所が指定取り消し処分を受けると,その事業者が運営する事業所の新規指定や更新が自動的に5年間認められなくなる)を設けているが,訪問介護最大手コムスンは連座制逃れのため,都道府県の監査中に事業所を廃止し,処分後も親会社が,コムスンの事業を別の子会社に譲渡することを企てた。現行法は,不正行為を指示した事業者を監督する規定がなく,都道府県が指定を行った事業所を監督するだけでは不正を防ぐことが難しい状況にある。
・改正法では,組織的な不正行為が疑われる場合には,事業所を運営する法人本体に国(複数の都道府県にまたがって事業を行う企業などで,約6600/約30000指定事業者が対象)や都道府県が立ち入り検査できる。また,事業者の規模に応じた法令順守担当者・法令順守マニュアルの整備の義務づけ,都道府県の監査中の廃止届の提出には事業所の指定・更新が受けられなくなるルールの新設,事業所を廃止する場合には利用者が継続して介護サービスを受けられるように事業者への利用者保護の義務づけ,などが規定された。

・関連法案として,介護現場の人手不足の解消に向け,介護職の待遇改善など人材確保策を2009年4月1日までに検討することを定めた「介護従事者処遇改善法」も同日成立した(下記項目6を参照のこと)。

【施行日】公布から1年以内
【成立】2008年5月21日
3 内閣府 消費者契約法等の一部を改正する法律

→○概要
→○経済産業省のプレスリリース
・法案提出の理由:消費者被害の発生または拡大を防止するため,内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が,不当景品類及び不当表示防止法及び特定商取引に関する法律に規定する消費者の取引上の判断を誤らせる不当な行為等についても差止請求をすることができる等の必要による。
・法案亭主までの経緯
不特定多数の消費者が受ける可能性のある被害の未然防止・拡大防止のための消費者団体訴訟制度が,消費者契約法に基づき2007年6月から実施された。この制度により,内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体は,消費者への不当勧誘や不当契約条項の使用など,消費者契約法上不当とされる事業者の行為に対して,差止請求をすることができる。改正法は,この消費者団体訴訟制度を「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」に導入するため,特定商取引法とともに消費者契約法等を改正するものである。
・改正法により,特定商取引法に違反する不当な勧誘や広告,不当な特約の使用などの事業者の行為にまで,適格消費者団体が差止請求訴訟を提起できる範囲が拡張される。

【施行日】2009年4月1日等を予定
【成立】2008年4月25日
4 警察庁 ■出会い系サイト防止法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の一部を改正する法律案

→○新旧対照条文



(2008.7.24追記)

警察庁サイバーー犯罪対策

情報セキュリティー対策ビデオ
「出会い系サイトには思いもよらない危険が潜んでいます。恐ろしいワナが潜んでいます。自分は平気と思っている「あなた」こそ、要注意です。名前を隠して異性と知り合える出会い系サイト。この出会い系サイトを利用して、凶悪犯罪の被害に遭う女子中・高生が増えています。このビデオでは、遊び感覚や興味本位で中・高生が出会い系サイトを利用して犯罪に巻き込まれる事例や、不正誘引を行ったために処罰の対象となる事例を通じて、出会い系サイトに潜む数々の「嘘」を描き出し、犯罪の危険性を警告しています。
・法案提出の理由:インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪が多発していることにかんがみ,インターネット異性紹介事業者に対する届出制の導入等の規制の強化を行うとともに,児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための民間活動の促進に関する措置を講ずる必要による。
・出会い系サイト防止法は,2003年に施行された法律であるが,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪が多発している(2002年以降毎年1000人以上の児童がサイト利用によって犯罪被害に遭っている)。
・改正法は,事業者に対して,都道府県公安委員会への届け出の義務づけ,児童・大人双方の誘ったりする書き込みを見つけた場合の削除の義務づけ,違反すれば事業停止命令など行政処分の対象とし,違法な書き込みの把握・削除要請をする民間団体には公安委員会が事業者に関する情報提供をすることとしている。また,保護者や携帯電話事業者へは,サイトのアクセスを制限するフィルタリング利用の努力義務を課している。

【施行日】公布から3か月以内
【成立】2008年5月28日
5 参院議員立法 ■GID特例法の改正(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律)・・・法案は右記の通り

→■改正前のGID特例法
・法案提出の理由:性同一性障害者の性別の取扱いの変更の審判の要件のうち,「現に子がいないこと」とするいわゆる子なし要件に対して,法改正の要望等が出されてきたことによる。
・改正法は,子なし要件につき,子の福祉にも配慮しつつ,「子」を「未成年の子」に改め,「現に未成年の子がいないこと」とすることにより,現に子がいる性同一性障害者であっても,当該子がすべて成年に達している場合には性別の取扱いの変更を認める。

【海外では】
・GID特例法は2004年7月16日に施行されているが,「子がいないこと」を要件とした欧米の立法例はない。


性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律(案)

 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号)の一部を次のように改正する。

 第3条第1項第3号中「子」を「未成年の子」に改める。

 附則
 (施行期日)
1 この法律は,公布の日から起算して6月を経過した日から施行する。
 (経過措置)
2 この法律の施行の日前にされたこの法律による改正前の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第1項の規定による性別の取扱いの変更の審判の請求に係る事件については,なお従前の例による。
 (検討)
3 性同一性障害の性別の取扱いの変更の審判の制度については,この法律による改正後の性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の施行の状況を踏まえ,性同一性障害者及びその関係者の状況その他事情を勘案し,必要に応じ,検討が加えられるものとする。
【施行日】公布から6か月以内
【成立】2008年6月10日
6 衆院議員立法 介護従事者処遇改善法 (介護従事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律) ・法案提出の理由:高齢者等が安心して暮らすことのできる社会を実現するために介護従事者等が重要な役割を担っていることから,介護を担う優れた人材の確保を図るため,2009年4月1日までに,介護従事者等の賃金水準その他の事情を勘案し,介護従事者等の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする必要による。
【「福祉行政の最新情報」2008年6月13日の記事再掲】
「2007年介護事業経営概況調査結果(暫定仮集計)」
〜訪問介護員の給与,3.6%減少〜
・特別養護老人ホームなど介護老人施設の人件費が増加し,事業収益が低下している。一方,訪問介護の事業所ではヘルパーなど訪問介護員の給与が3.6%減少し,介護福祉士(常勤)の給与は,2004年調査の25万7581円から24万5329円に減少した。
→法案の価値がよく分からなかったので,記事にもしなかったが,少し理解できたので掲載する。
2008年1月に野党は介護労働者の給与を2万円上げるという内容の法案を提出したが,与党からの「財源の裏づけがない」という批判を受けて,どういうわけか法案を取り下げた。その後,与野党間でお話し合いをされて,超党派の議員立法として法案を提出し,5月28日に成立・施行させた法律が「介護従事者処遇改善法」である。内容は,「来年4月までに,介護従事者の賃金をはじめとする処遇を改善するための施策の在り方について検討し,必要があると認めるときは,その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ということらしい。
本調査結果における今後の対応では,本格調査を9月までに実施・集計し,その結果を踏まえて「国民にご負担いただく介護保険料等の水準にも留意しつつ,平成21年の介護報酬改定時に適切に設定する」と明記されている。
結局,「介護労働者の給与が低すぎる」というキャンペーンは,来年度以降の「介護保険料引き上げ」のだしに使われているということが少し理解できた。(筆者)
・介護従事者処遇改善法案は,野党が議員立法で提出した「介護人材確保法案」を取り下げた後,具体的な介護職員の賃上げ策を削除するなど与野党間で修正した。
・関連法案として,上記項目4(■介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律)を参照のこと
【施行日】2008年5月28日
【成立】2008年5月21日
7 衆院議員立法 「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(ハンセン病問題基本法)

・ハンセン病は「らい菌」によって引き起こされる感染症の一種であるが,感染・発病力は非常に弱く,早期発見と適切な治療で完治できる病気である。しかし,日本では1907(明治40)年から1996年に「らい予防法」が廃止されるまで,国による隔離政策によって,ハンセン病の患者や家族は地域社会で平穏に生活することを妨げられ,ハンセン病に対する周囲の偏見や誤解から,人権上の制限や差別などの大きな被害を受けてきた。その中で,ハンセン病患者であった人などに対する差別や偏見の解消をさらに推し進めるため,「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が成立した。
@国立ハンセン病療養所等における療養および生活の保障
A社会復帰の支援および社会生活の援助
B名誉回復および死没者の追悼
C親族に対する援護


【施行日】2009年4月1日
【成立】2008年6月11日

・基礎年金の国庫負担割合については,2009年度までの間の別に法律で定める特定年度において1/2とされることを踏まえ,2008年度における国庫負担の割合を引き上げることを内容とする。

・簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律の規定等を踏まえ,独立行政法人国立がん研究センター,独立行政法人国立循環器病研究センター,独立行政法人国立精神・神経医療研究センター,独立行政法人国立国際医療研究センター,独立行政法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立長寿医療研究センターを設立するため,その名称,目的,業務の範囲等に関する事項を定める。

・障害者の雇用の促進およびその職業の安定を図るため,中小企業に関して障害者雇用納付金の徴収等の対象範囲を拡大するとともに,短時間労働者を雇用義務の対象に追加する等,施策の充実強化を図ることを内容としたものである。衆議院において「継続審議」となった。

・虐待を受けた子どもの社会的養護体制の拡充などを柱にした法案で,5月29日に衆議院で可決されたが,「後期高齢者医療制度」に端を発した参議院での首相問責決議可決の影響を受け,野党が継続審議の手続きをとらなかったため,結果「廃案」となった。
・法案は,「里親制度の見直し」で,里親手当を3万4000円から7万2000円に増額することを含み,里親制度全体の見直しと併せて2009年1月からの施行が予定されていたものである。

D高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律案

C2000年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案

B国民年金法の改正

A障害者雇用促進法の改正

@児童福祉法の改正改正法案の主な内容

A被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案

(2)第169回通常国会の新規提出法案(5法案)

@労働基準法の一部を改正する法律案

(1)第166通常国会からの継続案件(2法案)

【2】第169回通常国会で成立した福祉分野の主な法律
【1】第169回通常国会で成立しなかった厚生労働省提出の法案
2008年の第169通常国会で成立した法律(福祉関連)

(2008年9月23日最終追記)
(2008年7月4日掲載)

http://www.yamadajuku.com/

169回臨時国会に内閣府から提出された法律案
169回臨時国会に厚生労働省から提出された法律案

第169回国会(臨時会)で成立した全法律(2008年1月18日〜6月21日(156日間))
<「福祉行政の最新情報」の6月25日の記事再掲>
第169回通常国会閉会を受けた福田内閣総理大臣記者会見
〜『具体的な重要政策を5つの安心プランとして7月中にとりまとめ,早急に着手するように関係部署に指示することといたします』〜

第169回通常国会:2008年1月18日〜6月21日(156日間)
・内閣提出の80法案のうち63法案が成立したにとどまり,厚生労働省所管の5法案(@児童福祉法の改正A障害者雇用促進法の改正B国民年金法の改正C2000年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案D高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律案)など国民生活に密接に関連する法律を含めて,17の法律が成立に至らなかった。


→80法案のうち厚生労働省所管は9法案であったが,成立は4法案であった(@戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律,A駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律,B感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律,C介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案)。(筆者)